町の健康を守るお薬屋さん「横澤 臣紀さん」

気仙中央薬局

横澤 臣紀 さん

業種:薬剤師

薬剤師という仕事

薬剤師のお仕事はどんな仕事ですか?

みなさんのイメージだと、病院でもらった処方箋を薬局に持っていくと、薬剤師さんが薬を用意し、説明してくれる、という感じだと思います。
実は他にも色々な活動をしています。
全員ではありませんが、小中学校へ行って空気や水質の検査をすることもあります。つい先日は、児童生徒たちに麻薬や覚せい剤、危険ドラックの危険性や正しい薬の使い方についての講義をしました。
震災後は仮設住宅での講話を依頼されたりもします。薬剤師の仕事としては意外と知られていない活動かもしれません。
わたしの場合、実家の薬局にも顔を出すので、休みはほとんどないですね(笑)
大船渡にいる間はずっと働いています。

今の仕事を選んだきっかけはなんですか?

実家がもともと薬局だったので、いつのまにか目指していた、というのが正直なところです。北海道の大学へ進学し薬剤師の資格を取りました。卒業後は北海道で修行するつもりでしたが、実家の事情もあり1年で帰ってきました。でもそのまま実家の薬局には入らず、外で挑戦してみるつもりで気仙中央薬局に入りました。
この薬局は気仙地区の薬剤師会の事務局をやっていて、薬剤師会の仕事や地域向けの活動もあります。ただ単に薬局で薬を売ったり作ったりするよりは視野も広がり、忙しいながらやりがいはあります。北海道に残っていたらできなかったかもしれません。

仕事をする上でのこだわりはどんなところですか?

薬をただ渡すだけではなく、患者さんの気持ちに寄り添えるようにしたいとは思っています。薬を押し付けるのではなく、患者さんが自分から飲もうと思えるようなモチベーションに持っていけるよう、丁寧に接しています。難しいことですが、そんな薬剤師になれたらと思います。
なぜかわたしは歳が若く見られるようで、けっこう打ち解けてもらえるんです。人の話を聞くのも好きだし、これからも患者さんとのいい関係づくりは目指していきたいですね。

今まで苦労したことはなんですか?

大変だなと思うときは、患者さんの意識を変えられないときですね。患者さんもいろいろな思いを持って治療に当たっていると思うのですが、その思いをうまく引き出せなかったりすると、治療や薬に対して拒否反応を持たれてしまいます。
例えば過去に治療内容や薬でいやな思いをしたことがあったとしたら、今は違う治療を行っていたとしても不信感がぬぐいきれないんですね。そこをどうほぐしていこうかとか、そもそもその問題点をどうやって引き出そうかということには心を砕いていますね。
気持ち的に大変だったりしますがその分、「お大事に」と薬を渡して「ありがとうございます」と笑顔で帰っていく姿を見ると本当に嬉しくなります。それこそ、薬剤師になりたての頃は震えるくらいうれしかったです。

震災の時は苦労されたと思います。

震災直後に機能していた病院は大船渡病院だけだったと思います。みんな大船渡病院に殺到したので、病院側は対策として院外に処方を出しました。その時無事だった薬局は、うちを含めて3軒くらいだったと思います。とにかくきた患者さんに薬を渡すという業務だけにすべての時間と労力を費やしました。間もなくして、ボランティアや他の地域の薬剤師さんが来て手伝ってくれました。
一方で、支援物資として市販薬がたくさん届いたものの、処理しきれずに保管されているという情報が入りました。それは大変だということで、薬を分類し、各避難所へ運び、『お薬カウンター』を作ったんです。それまでは1つの風邪薬をみんなで分けて飲んでいたそうです。病院からもらった薬は流されたりして持っていなくて、不安もたくさんあったと思います。そんな人たちの助けになれたらと思い、『お薬カウンター』で一人一人の症状を聞いて、支援物資の中から薬を渡しました。それでも改善されなければ病院へ行ってもらうなど、“とりあえず”ではありますが、とにかく不安を取り除く作業を続けました。
仮設住宅が出来てからも、個々の家には薬が揃わないため、救急箱を作って配布しに回りました。ただ置いてくるのではなく、できるだけ話を聞いて、症状に合わせた薬の使い方を説明しました。

これからやってみたいこと、目標を教えてください。

今は、在宅医療が進んできています。例えば末期ガンの患者さんが、最後は自宅で過ごしたい、という風に。そうなると、病院の先生だけではなくて、薬剤師や薬局も療養中の患者さんに薬を渡したり説明したり、ということが増えると思います。その分野をこれから深めていきたいと思っています。
また、これからこの業界はただ薬を作って売るのでは食べていけなくなると思っています。なので、それプラスアルファのこと、学校や地域に対して価値を還元していくことや、この地域から長く働ける薬剤師を見つけて育てていきたいと思います。

横澤さんが子どものころ、働くということをどう考えていましたか?

仕事を始める前までは、それほど働きたいと思っていたわけではなかったです(笑)。給料と休みがもらえるところで働こう、くらいしか考えていませんでした。大学へいきましたが、そこでもそんなに考えていなかったように思います。それが、実際働き出すと、イメージと違うこともたくさんあるし、患者さんに喜んでもらうだけでこんなにうれしいんだと初めて知りました。

薬剤師の仕事のいいところを教えてください。

薬剤師なので薬を扱うわけですが、それだけ見ていてもうまくいかないものです。病気も薬もその人の一部でしかないわけですから、その人が健康になることを突き詰めるには、その人とどう関わるか、ってことなんです。結局は人と人との関係なんです。それがうまく構築できていれば、薬を介せずとも相談しに来てくれたりするんです。そういうところはやりがいにつながります。